等級と損害賠償金

交通事故による損傷を受けた後、これ以上治療を続けたとしても症状の改善が見込まれず、何らかの障害が将来においても残ると診断され(これを、症状固定といいます)、残った障害が後遺障害となります。後遺障害が残った場合、逸失利益や慰謝料といった損害賠償金が、最低限度でも自賠責保険による基準によって支払われます。その基準となるのが、交通事故後遺障害の程度を表す等級です。

等級は7種類あり、第1級1号、第2級1号、第3級3号、第5級2号、第7級4号、第9級10号、第12級13号となります。例えばこのうち第1級1号が示す内容は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」とあります。

脊髄損傷の場合では、手あるいは手と足の両方が動かすことができない状態であったり、もしくはほとんど動かすことができず、食事や入浴といった日常生活を送るために常に介護を必要とする状態をいいます。この第1級1号と認定された場合の自賠責保険による後遺障害慰謝料の金額は、裁判所基準でおよそ2,800万円となります。

脊髄損傷を負ってしまった場合、損傷が完治することは難しく、また日常生活に介護が必要になるケースも多々あります。治療費も相当掛かってしまいます。安心して治療を行うためにも、なるべく多くの損害賠償金が欲しいところです。

実は、症状固定のタイミングなどの専門知識の有無によっては、補償される金額が変わってきます。専門の弁護士にまずは相談し適切なアドバイスをもらいましょう。

合併症とその対策

脊髄損傷は身体の麻痺以外に、合併症を引き起こす身体的なリスクを生じます。その中でも「二大合併症」とされているのが褥創(じょくそう)と尿路感染症です

褥瘡は、一般的には「床ずれ」と称され、体重で圧迫されている部分の血流が悪くなったり滞って、皮膚が赤くなったり、最終的に脂肪部まで抉られるように皮膚が壊死することです。長時間同じ体制で横たわったり座っていたりすると、血流が悪くなりしびれるので通常は寝返りなどで体形を変えるものですが、脊髄損傷によって感覚が失われているとそれに気づかないためにこの褥瘡になってしまいます。

これを予防するには、周期的に身体を持ち上げる(プッシュアップ)ことや、絶えず姿勢を変える(自分の力でそれが不可能である場合は補助が必要となる)といったことが必要になります

尿路感染症は、尿の通る経路である尿路に有害な細菌が侵入し、様々な障害が引き起こされる感染症です。脊髄損傷の場合、多くの脊髄損傷の患者は自力で排尿をすることができないため、カテーテルなどという医療器具を使って排尿を行いますが、その際カテーテルを通して細菌が侵入するのが原因になります。

感染個所によって、「上部尿路感染症」と「下部尿路感染症」の2種類に分類されます。「上部」では主に発熱が、「下部」では膀胱炎や尿道炎が発症します。予防としては、器具や手指の清潔・殺菌を徹底する必要があります。

いずれの合併症でも、早期発見と専門医による指導・処理を受けるべきです。

脊髄損傷のリハビリ

脊髄損傷におけるリハビリテーションは、基本的に機能が失われた部位の回復を目的としません。一度切れた中枢神経の繋がりは元に戻ることはなく、失われた部位は回復することは無いからです。リハビリの目的は、あくまで必要な筋力を強化し、車いすの操作などに慣れ、日常的な生活を送れるようにすることにあります

脊髄損傷を受傷した後、急性期を過ぎたらなるべく早期にリハビリテーションを始めることが望ましいです。長く横たわっていればそれだけ筋力は落ち、循環機能も低下して復帰までより時間がかかってしまうからです。

リハビリの内容はICU(集中治療室)から一般病棟に移ると、頃合いを見計らって段階を踏んで使用するベッドのリクライニングの角度を上げていきます。(これをギャッジアップといいます)少しずつである理由は、長い期間横になっていたため血圧低下が起きており、急に体を起こすと脳貧血を起こすためです。その次は車椅子に移る訓練が始まり、車椅子上で脳貧血を起こさないようになれば理学療法、手の機能に障害を持った場合は作業療法というようなリハビリに移ります。

また、失われた部位は回復することは無いといっても、神経の伝達機能が完全には失われていない不完全型の脊髄損傷であればトレーニングを続けることで運動能力がある程度回復する可能性もあります

交通事故後の対処

交通事故の被害を受け、神経学的診断や画像検査(X線など)といった検査の上、脊髄損傷と診断されてしまった場合その後はどう行動すればよいのでしょうか。

脊髄損傷を患ってしまったら、損傷部位や損傷の程度によって症状は変わりますが、少なくとも文字が書けない、歩くのに杖や歩行具が必要になるといったことから、車いすを用いる必要があったり、人工呼吸器でないと呼吸ができないなど、生活や労働が困難になるような状態になることは間違いありません。家族の介護が必要になる場合がありますし、少なくとも健康な頃の生活は戻ってくることはありません。

完全な脊髄損傷の治療は難しいですが、それでも社会復帰のためにリハビリはもちろん必要になります。また、治療には膨大な治療費がかかります。交通事故による脊髄損傷の場合では、自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責)によって損害賠償金が出ますが、治療にかかる金額が自賠責の損害賠償金の限度額より高くなることもあります。

そして、自賠責による補償金は適切な方法を取れなければ保険による損害賠償金が本来得られる金額より少なくなる場合があります。また、脊髄損傷から引き起こされる合併症にも気を付ける必要があり、予防と適切な対処が必要になります

当サイトでは、リハビリの内容、合併症についてとその対策、補償金の基準となる損傷の程度を表す等級について、そして正しい損害賠償金を受け取るための適切な方法について紹介します。